手ぶら登園保育コラム

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【第二回】小崎先生オンライン相談会~コロナ禍における保育施設行事について~

小崎先生オンライン相談会コロナ化における保育施設行事について

新型コロナウイルス感染拡大による行動制限や自粛が長期化し、なかなか終息の兆しが見えない中で保育施設でも様々な面で、判断や決断を問われる機会が増えてきていると思います。

小崎先生オンライン相談会第二回は小規模保育施設の園長から、「コロナ禍における保育施設行事」についてのご相談です。目まぐるしく変わっていく情勢の中で、どのような基準で判断をしていくべきか解説いただきました。

第二回は小規模保育施設の園長先生から、「コロナ禍における行事について」についてのご相談です。

先が見えないコロナ対応に悩む保育施設

園長:コロナ禍における保育施設行事についてのご質問です。園で細々とした行事はしていますが、大型行事の実施については悩んでいます。今年の運動会は、1部・2部制をとった上で、消毒や検温などを行い、コロナ対策にも気を配る予定です。換気に関しても会場に全てお任せをして、万全な準備をしています。

当初は9月に運動会を行う予定でしたが、緊急事態宣言が延びたので予備日の10月に変更することになりそうです。コロナ禍で大型行事の開催の線引きが厳しい状況の中、他の保育施設ではどのように大型行事を開催しているのか、そもそも開催自体を中止しているのかということが気になりご質問しました。

小崎先生:元々僕は保育士をしておりまして、色々な研修をしております。その中で「コロナと保育所における役割」という70分くらいある動画を作成したことがあります。コロナによって色んなことが変わってきましたよね。例えばプールは、どうしてますか?

園長:プールには入水せずに水遊びに変更し、屋外に設置しています。19名の子どもたちを3グループくらいに分けて、1グループあたり10~15分で入れ替わるように遊んでいます。

小崎先生:プールをやめたのは、市からの要請などがあったからですか?

園長:そうですね。

小崎先生これも実は自治体によって全然違います。大阪府の南部にある自治体では、そのエリアの園では、プールをしています。それは、小学校がOKにしているからということでした。だけどある園は、教育委員会で小学校のプールをダメって言ってるけど、園独自の判断でプールを実施してるなど、何を根拠にするべきなのかがすごくあやふや。特に保育に関してはそうなんです。だから悩むところだと思います。

まずは保育所保育指針の集団感染に対する理解

小崎先生:自治体の方から、保育施設では一切行事をやめてください、という風に言われれば、判断はしやすいですよね。けどそれは、基本的に保育施設では出来ないんですよ。なぜかというと、保育施設は児童福祉法に基づく施設だからです。小学校や幼稚園といった学校教育法に基づく施設と異なり、児童福祉法に基づく施設には、園を閉める規定がありません。

そのため、行政が強制力をもって、閉所や休園などを決めることができないのです。あくまでこのような情報がある、であったり、このようにしてください、であったりなどの依頼になるので、そこに法的な明確な根拠がありません。そしてもう一つ、何かあったときの責任は取ってくれないということ。だからすごく悩むところですよね。

ではどのように根拠をもって判断していくのが良いかというと、例えば指針です。指針っていうのは、10年毎に改定になってます。10年前に東日本大震災があったから、3章のところでは、健康のことや安全のところをしっかり書いています。よく読むと、集団感染のことも書いてます。無論、コロナとは書いていないですよ。しかし、職員は理解をしていく必要があります。

行事から何を伝えたいのかを明確に

小崎先生:もう一つ、通われている子どもや保護者、保育環境などはそれぞれの園によって違いますよね。そのため、法人として一定の方針は出したとしても、それを園ごとに変化させたり、カスタマイズさせたり、保育士が柔軟に対応しなくてはいけないでしょ?やっぱり専門の先生、プロの先生方が、色々なことを加味しながら、その場で法人として判断していくしかないと思います。

他の園が実施していることはもちろん参考にすると良いと思いますが、人手が掛けれるようなところや、お金があって専門の業者を呼んでいるところとは、また話が違ってくると思います。その時に一番大事なのは、保護者がどう思うか。僕の妻も今保育に関わっていますが、運動会や保護者参観とかすごく悩んでる。

運動会は絶対やってほしいという保護者もいれば、絶対やめてほしいという保護者もいる。保育のやり方って必ずしも正解がある訳ではないので、やっぱりプロである先生方が、「この行事は子どもの成長にとってこういうことが大事だから実施します。」と、決めていかないといけない。

小崎先生:ただし、感染予防としてアルコール消毒をしたり、密にならない工夫をしたりなどの配慮は大事ですよね。同時に、見てくださる保護者の方にも申し訳ないけど、各家庭1人とか、あるいは距離をあけて参観してもらうなどの条件をつけることが必要にはなってくるかな。

もう一つは、園、保育士として、その行事が本当に必要なのかどうかということ。行事から何を伝えようとするのかってことですよね。

例えば、運動会をする場合、この運動会を企画することによって、子どもたちのどういう力を育てようとするのか、あるいは、何を保育の中で大切にするのか、それは運動会でないと達成できないのかどうかっていうことですよね。

他の先生と対談したときに、「やり方は変えるけど本質は変えない行事の捉え方をした」とおっしゃっていた先生がいて、すごく良い言葉だなと思いました。その行事じゃないと実現できないのであれば実施したらいいし、そうでないのであれば、見直したり、簡略化したりしていくことが大事になってくるのかなと思います。

特にネットワークが弱かったりすると、他がどうしてるかの情報があまり入ってこないのではないかなとは思うので、他の園からお話聞いたりして保護者を説得する材料にするのは良いかもしれませんね。

デルタ株の前は子どもはかかりにくいとか言われてたし、僕もそのように話はしてましたが、認定こども園のプールでクラスターが出たというのを聞いて、少し考えが甘かったなと思いました。どんな判断をしても、状況はどんどん変化していってるということを考えていく必要があります。

そして、社会的にどういう風にみられるかということも、経営の視点では大切だと思います。

保育士を守るためにも根拠を持つ

園長:情報があまり入ってこないというのもありますし、市や保健所がパンクしていて、ほぼ保育施設自身で判断しなくてはいけない状況の中で、保護者の気持ちやお仕事の事情とかも加味しながら保育をすることがなかなか難しいと感じています。

小崎先生:この一年半を振り返って、なぜその判断をしたかの根拠を自分で考えたり意識したりするのが良いかもしれませんね。例えば、「市や厚生労働省が〇〇ということを言っていたので、〇〇の判断をしたんですよ」という根拠を示したり、明確にしたりすることが大事。先生方を守るためにも、どんな根拠で判断をしたのか整理しておきましょう。

園長:また、保護者のコロナに対する認識の違いに戸惑うことはあります。1人は「大丈夫でしょ、私の周りはなってないし」という人もいれば、すごく怖がってしまって保育施設自体来ないって判断を取られる方もいるし、そこがなかなか難しいです。

小崎先生:コロナに対する温度差のずれはあると思います。私は、もし小規模で19家庭が登園していたら19通りの考え方があるという風に思っています。それに細かく対応するのは難しいですけど、それを加味しながら、園としてはこういう方針ですと伝えていく。

そしてここまではできるけど、これ以上できませんということを伝えていくことも大事ではないかな。園も初めての経験なのに、サービスを提供する側という意識があると、「分かりません」と言いにくいですよね。だけど、保護者と不安を共有しながら解決していくっていうのもひとつ大切なことではないかなって思います。だって誰も分からないことだから。

園長:毎分毎秒違う対応を問われている中でも、根拠を大事にして、園として大事にしていく部分を保護者に伝えていったほうが良いなと思いました。

小崎先生:子どもたちを守っていかなければいけないのと同時に、先生方お一人おひとりも守っていく必要があります。今、保育士には完璧を求められるでしょう。その大変さというのが今回のコロナで顕著になったと思います。コロナに関しては答えをだしにくいところではあるんですけど、普段の保護者対応や保育のあり方考え方の軸をより明確にし、それを今日いる先生方で共有したり話し合ったりすれば良いのではないかなという風に思います。

まとめ

感染拡大に対する耐性を高めながら、日々の保育の制限を段階的に緩和し、感染対策と日常生活を両立させていくために、法人として園としての判断基準や考えをしっかりと明確にしていくことの大切さをお話しいただきました。

答えがなく、また終わりの見えない課題ではありますが、有識者や専門家の方々に助言いただくことで、少しでも不安が解消され保育士が安心して保育に向かうことができれば良いなと思います。この不安な日々が一日も早く収束しますよう、心から祈るばかりです。

小崎恭弘
大阪教育大学教育学部准教授。1968年兵庫県生まれ。兵庫県西宮市公立保育所で初の男性保育士として12年間、保育に携わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』をはじめ、テレビや新聞、雑誌など多方面で活躍中。年間通して全国で育児指南を披露する子育ての講演を行う。NPO法人ファザーリング・ジャパン顧問。『家族・働き方・社会を変える父親への子育て支援』『子どもの力を伸ばす!! じょうずな叱り方・ほめ方』など単著・共著多数。NECQA(保育士と保育の質に関する研究会)代表。

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