手ぶら登園保育コラム

保育園の運営に役立つ情報を発信

【第一回】小崎先生オンライン相談会~小規模保育施設での発達の心配なお子さんとの関わり方について~

小規模保育での発達が心配なお子さんとの関わり方について

コロナ禍で今まで以上に保育施設間での情報共有の場が減り、自園の行っている保育が正しいのか、不安に感じることもあるかと思います。
手ぶら登園ではそんな悩みを抱える保育士のために、保育の専門家である小崎恭弘先生に直接相談できる、対談式のオンライン相談会を実施しました。

第一回は小規模保育施設の園長先生から、「小規模保育施設における発達の心配なお子さんとの関わり方」についてのご相談です。

小規模保育施設での保育の厳しさ

園長:自園に発達の心配なお子さんが2名います。
パニックや癇癪がひどく、うまく話せない分、保育士を噛んだり、ひっかく等の行為で感情を訴えているような状況です。そんな様子を周りの子が見ているので不安に思わないかと考えたりします。

ほかの子どもたちと一緒にいる空間をどういう風にしたらいいのか、いつも悩んでいます。加配をつけてもらっていますが、小規模内での保育はなかなか難しいと感じています。

小崎先生:全体で何人ですか?

園長:12人です。

小崎先生:12人のうち2人は大変だね。
私は元々障がいのある大人の施設の指導員だったので、障がいのある子どもたちの大きくなった姿を知っています。昔の小規模保育は障がい加配がなかったので、「障がい児を預かってよ」という雰囲気もありましたね。今は加配がありますが、障がい児を受け入れることが良いかの判断は1つ必要となってくると思います。

小規模の限界もあるし、環境面や設備面、人材等を考えると、整っている認可、公立施設で受け入れることが、子どもにとっていいのではないか、という視点は1つ考えてほしい。そして、保護者とも交渉をしていく必要があると思います。それは大きな話なので、受け入れたら日々の保育に取り組んでいきましょう。

子どもと保護者のために、園長の取り組み

園長:先日療育手帳を取れたばかりの子は、入園から時間をかけてお母さんと話をしてようやく手続きをされました。

小崎先生:園長先生それはすごいよ。発達障がいの場合特に、一生消えない刻印を子どもに押すことになるからね。それに対する抵抗感とか不安感というのは、すごく大きいと思います。

それは先生との出会いがあって、想いや経験を大事にして伝えてきたから、お母さんも動いたのだと思います。極端に言うと「もうええわ」となる保育士もいると思います。2年掛けてそのような関係性ができたことが、すごく大事。だけど、先生が全部抱えていく大変さもあると思いました。

園長:そうですね。このように聞いてもらって話せる場があるのは助かります。

障がいの有無関係ない「インクルーシブ教育」

小崎先生:この経験は本当に貴重で、保護者の方々にとってはすごくありがたい話だと思います。
「障がい児保育という保育はない」という先生もいます。子ども一人ひとりに対応していくために、障がいがあろうがなかろうが関係ないというのが、まさに「インクルーシブ教育(※1)」。

少し前は「ノーマライゼーション」という言い方をして、障がいのある人ない人が一緒に生きていくことが、ノーマルな社会という考え方でした。今「インクルーシブ教育」は一つ進んで、障がいがあろうがなかろうが学ぶことは必要で、生活することは必要だから、全部包括して考えましょうという考え方になってきています。今の考え方で言うと、配慮が必要な子どもたちも、配慮が少なくても大丈夫な子たちも同じように大切にしましょうというのが大事。

今回の子のような、嫌なことがあって噛む子はある意味分かりやすいです。
私は噛みつきの研修も行っていますが、噛みつきは0歳の後半から3歳に多いですが、4歳児クラスになると少なくなります。なぜかというと、噛むことよりも言葉や手を出す方が上手くやれるから。いま発達段階で3歳未満であれば、まさに噛みつきをしなければいけないとき。言葉の獲得に向かっている段階で、これからだんだんと噛みつきはなくなるのではないかなと思います。

今までと同じように丁寧な保育をされて、子どもが嫌な時に噛むんですということを理解していることが大事。子どもが噛みつきによって自分を表現していると思うと、間違った表現かもしれないけれど、その子なりの表現といえるかな。

また、お医者さんから伝えられる発達段階の年齢に関しては、気を付けないといけない。発達障がい、知的障がいの発達段階には人によってバラつきがあり、それに惑わされると子どもへの対応の難しさも出てくると思います。
そして自閉症スペクトラムの判定は、36か月までに見つけるというのが1つの判断基準になっていましたが、それがまさに3歳。その違いというのは、例えば遊びに関して言うと、今までは発達障がいの子も同じように遊んでいたけど、色々と差が出始め、一緒にやりにくいことも出てくる。このギャップを保育士が意識したり、埋めていくことが大事になってくるかな。

もう1つ気になるのが、ほかの子どもたちへの影響ですね。

園長:はい。一緒に遊ぼうという気持ちでほかの子どもたちはいてくれるのですが、すっと離れていくから、「あれ?」という感じの場面はありますね。

小崎先生:これは考え方ですが、障がいをもつ子たちも一緒に生きていけるよねということを小さいうちに学んでいくことはすごく大事だと思います。ただ、保育士への配慮は必要になると思う。

一番は子どもたちを大事に育ててあげてほしい

小崎先生:「イヤーっ」とパニックを起こす子についてだけど、絵カードを使ったりしています?

園長:巡回の先生にご指導をいただいて、「絵カードは今要らないかな」と言われていたので、今のところは使ってないです。

小崎先生:絵カードがはまる子もいるし、はまらない子もいますよ。
だって本人も分からないしこっちも分からないから。

園長:写真カードをやろうか検討をしています。

小崎先生:写真が合う子と、抽象的な絵カードが合う子がいると思います。また、日々の生活の中でその子の嫌なことは少し減らしていく。その子だけ特別というのは保育の中で難しいことだと思いますが、加配がついているところを最大限生かしていくのがいいんじゃないかな。

本当に対応が難しいのは重度の人ではなくて、軽度や社会との関係性ですごく痛めつけられてきた人。大人になったときに、人に対する関わり方に緊張感ができていることがあります。重度の人は、比較的丁寧に関わってもらえたり、大事にされてきたりしているので、人との関係性を作って上手く生きていけているなと感じます。

そういうことを思えば、いまその2人に対して、配慮しながら大事に育ててあげて欲しいなと思う。毎日機嫌よく来てくれたら一番じゃないかな。

園長:そうですね。ありがとうございます。それが一番大事かと思います。欲が出て、こんなことしてあげたい、あんなことしてあげたいって思うんですけど、元気に来てくれたらそれが一番なので。

小崎先生:保育士全体でそういうことの認識をしていって、日々育っていくというのは障がいがあろうとなかろうと大切なことだと思います。

壁を乗り越え保育士たちが一体感を

園長:あの子たちのおかげで、私たち保育士が同じ方向を向いてると思います。同じ方向を向くことは一人ひとり保育感が違うと難しいところですが、経験を積み重ねているうちに一緒になったかなと思います。

小崎先生:それは園長先生がそのような思いで、マネージメントを意識されているからですね。

園長:ありがとうございます。元気づけていただきました。

小崎先生:努力をされていることが保育に活かされているし、嬉しいとか楽しいっていう想いを子どもたちと共有してもらったらいいと思います。今回私が先生を強めたように、先生は保護者を強めていってあげてほしいです。障がいのある保護者にとって、大切に思ってくれる人と出会う経験はすごく大事で、先生との出会いが力になり、勇気づけられたらいいなと思います。

園長:感動しました。ありがとうございます。これからも笑顔で頑張りたいと思います。

まとめ

コロナ禍で保育士の多くが人とのコミュニケーションや学ぶ機会が減り、不安に感じることもあるかと思います。
例えオンラインでのコミュニケーションであったとしても、人とコミュニケーションを取ることによって多少なりともその不安は解消され、心のゆとりに繋がります。
子どもは大人の雰囲気を敏感に察しますので、自分のため、子どものために様々なコミュニケーションの機会を大事にしていきましょう。

・インクルーシブ教育※1
障害のあるないに関わらず、誰もが個々の違いや個性を認め合いながら共に学ぶことを目指す教育

小崎恭弘
大阪教育大学教育学部准教授。1968年兵庫県生まれ。兵庫県西宮市公立保育所で初の男性保育士として12年間、保育に携わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』をはじめ、テレビや新聞、雑誌など多方面で活躍中。年間通して全国で育児指南を披露する子育ての講演を行う。NPO法人ファザーリング・ジャパン顧問。『家族・働き方・社会を変える父親への子育て支援』『子どもの力を伸ばす!! じょうずな叱り方・ほめ方』など単著・共著多数。NECQA(保育士と保育の質に関する研究会)代表。

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