森のようちえんが育む、子どもたちの主体性。「自然と手をつなぐ」新しい保育のかたちとは
自然の中で、子どもの主体性を大切に生きる力を育む「森のようちえん」。現場ではどのような活動が行われているのか、ご存知ですか?
興味はあるけど詳しく知らない方に向けて、今回は「森のようちえん」の1日体験イベント「いこーよ!森の冒険ピクニック」(主催:一般社団法人子育てママの応援ぷらっとホーム)のご紹介と共に、活動に携わる先生方の声をお届けします。
自然をフィールドに遊ぶ「森のようちえん」とは
「森のようちえん」は、デンマークで一人のお母さんが、近所の子どもたちと森の中で保育をしたことが始まりと言われています。ドイツや北欧を中心に世界に広まり、日本でも様々なスタイルで活動が行われてきました。
自由なスタイルであるがゆえ、その全ては把握されていませんが、全国各地の活動をゆるやかに繋ぐ「NPO法人森のようちえん全国ネットワーク連盟」には、ほとんどの都道府県に会員となっている団体があり、少しずつ広がりをみせています。
「森のようちえん」を体験!「森の冒険ピクニック」
体験プログラム「いこーよ!森の冒険ピクニック」が開催されたのは、大阪・服部緑地公園。池や川がある森をはじめ、広場や花壇など自然の中でさまざまなレジャーを楽しめる場所です。
「森のようちえん」のフィールドは自然の中。だからもちろん集合場所は、活動拠点となる森の入り口です。
集まった保育スタッフは、近隣の「森のようちえん」で働く保育士など十数名。そこに、子どもたちはリュックにお弁当、水筒、着替え、雨具などを詰め込み、「おはよう!」と元気に集まりました。
「今日は何をして遊ぶ?」
「どこに行こう?」
子どもたちがやりたいことを出し合って、みんなで相談しながら一日の過ごし方を決める風景は、「森のようちえん」では当たり前。意見が異なった時も、できるだけ子どもたち同士で話し合い、保育者はそばで見守ります。
水遊び。
どんぐり拾い。
露草の色水作り。
森を散策しながら、次々にやりたいことを見つけていく子どもたち。その様子を、保育者は近くで見守りながら、そっと子どもたちの背中を押していきます。
はじめは森に馴染めなかった子どもも、時間が経つにつれ、少しずつアクティブになっていきました。森との距離感や関わり方がわかってきたのでしょう。
「森のようちえん」では、子どもたちが主役。だから普段なら大人が「危ないからダメ」「そっちに行かないで」と言ってしまう場面でも、「NO」ということはありません。
「のこぎりなどの危ないと思うような道具も、ちゃんとした使い方をしたら、危なくないよ」と声をかけるスタッフ。何をどこまでやって大丈夫で、どこからが本当に危険か。それを知っている保育者が寄り添うことで安心し、子どもたちの心と身体はどんどん開放されているようでした。
心の赴くままに遊んで、あっという間に1日が終了!終わりの会で、お迎えに来た保護者も交えておもしろかったことや、もっとやりたかったことを共有して、帰途につきました。
どうして「森のようちえん」をやっているの?
子どもの主体性を重視し、自然体験や友達との関わりを通じて自分で考え、行動できるようにする「森のようちえん」。運営者は、「森のようちえん」のどのようなところに惹かれているのでしょうか?
「いこーよ!森の冒険ピクニック」に保育者として参加し、自身も「森のようちえん」を運営する「せた♩森のようちえん」の西澤彩木先生と、企業主導型「えくぼ保育園」の寺田延代先生にお伺いしました。
「森のようちえん」をはじめようと思った、きっかけを教えてください。
西澤もともと幼稚園教諭として働いていました。以前の職場にも不満はなかったんですが、遊びを通して子どもの主体性が育まれることを実感して。子どもたちがより成長していく環境ってどんなだろうと原点に帰ると、「森のようちえん」に行き着きました。
寺田私は自分の子どもを通わせたかったからですね。もともと教育畑の人間なので以前から「森のようちえん」は知っていましたが、娘を妊娠中に運営者の話を聞くことがあって。私自身が「暮らしの中に保育がある」と思っているので、野菜や果物の収穫、梅干し作りができる環境で子育てしたかったんです。
「森のようちえん」にはどのような魅力がありますか?
西澤自然と暮らしの中で保育し、幼児教育として子どもたちの主体性を大切にできることです。一般的な園でも遊ぶ時間を大切に過ごしていますが、運動会や発表会などの行事があり、保育者の決めた年間のスケジュールに合わせて動きます。「森のようちえん」は、朝集まって「どこへ行く?」「何をする?」から始まる。大人と子どもが対等な関係のもと、とことん子どもたちがやりたいことをできるんですよ。
寺田子どもが自分で生きていくために必要なことが、森の生活にはたくさんあります。野外のハプニングは、子どもたちのやる気を生むんです。一般的な設定保育で、準備された材料の中で遊ぶと、大人が想定した枠内でしか育てられません。森では軽々と、そこを飛び越えられるんです。
最後に、これから取り組みたいことを教えてください。
西澤「森のようちえん」は、ほとんどの都道府県で行政から認証されていません。森をフィールドにしているため園舎を持たないなど、行政の定める基準に満たない団体も多いのは事実です。しかし、例えば駅前に作る保育ルームは、預ける親側の意向に寄り添っているかもしれませんが、必ずしも子どものことを考えた施策でないようにも感じます。公教育も、変わっていくべき部分はあると思うんです。
「森のようちえん」の意義を発信しながら、子どもたちの主体性を育む幼児教育のあり方を、保育者のみなさんと一緒につくっていきたいですね。
寺田「森のようちえん」をキーワードに、子どもも親も開放されるような仕掛けや提案をしていきたいです。100名、200名といった大きな単位ではなくても、地域に小さい幼稚園・保育園がいっぱいあれば、今よりも子どもたちがやりたいことに寄り添える世界を作れるはず。
みんなが未来の子どものために手を尽くし、気軽にやりたいことができる世の中をつくれたら嬉しいですね。
「『森のようちえん』でも一般の園でも、子どもの様子は変わらないですよ。子どもの本質は同じだから」。西澤先生がポロリと口にした言葉が心に残っています。
「いこーよ!森の冒険ピクニック」を終えた子どもたちは、みんなやりきった表情をしていました。きっと、心を開放し、やりたいことに思いっきりチャレンジできたからでしょう。
自然の力はもちろん大きい。しかし、子どもたちの自信に満ち溢れた表情が生まれたのは、間違いなく、子どもたちに対等に寄り添い続ける保育者の存在があったからです。
1日体験のイベントとはいえ、「森のようちえん」の保育者の子どもへの関わりを見て、子どもが本来持っている主体性や好奇心は、接し方一つでぐんぐん伸びていくのだと実感しました。
「森のようちえん」も公教育も、子どもの未来のために一人ひとりの保育者が手を取り合って歩んでいけたら、今よりももっと希望に満ち溢れた世界が広がりそうです。もし「森のようちえん」に関心を持たれた方がいたら、ぜひ全国各地の園に足を運び、話を聞いてくださいね。
★NPO法人森のようちえん全国ネットワーク連盟
西澤先生が運営する「せた♩森のようちえん」(滋賀)
https://www.facebook.com/setamori.shiga/
寺田先生が運営する「えくぼ保育園」(滋賀)
おむつの管理が楽になる手ぶら登園
おむつのサブスク手ぶら登園( https://tebura-touen.com/facility )とは、保護者も保育士も嬉しいおむつの定額サービスです。手ぶら登園は、2020年日本サブスクリプションビジネス大賞を受賞し、今では導入施設数が1,000施設(2021年6月時点)を突破しています。
保育園に直接おむつが届くため、保護者はおむつを持ってくる必要がなくなり、保育士は園児ごとにおむつ管理をする必要がなくなります。