手ぶら登園保育コラム

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園行事を通した保護者連携、どう進めたらいい?——よくわかる『保護者対応』の進め方③

園行事を通した保護者連携、どう進めたらいい?——よくわかる『保護者対応』の進め方③

保育士の仕事の中でも、重要なものの一つである「保護者対応」。

子どもの発達、日々の関わり方の相談から、いざというときの具体的な家庭支援まで、現場ではさまざまなものが求められます。「こんな相談をされたけど、どうしよう…」と悩まれた経験のある方も多いことでしょう。

この連載では、保育現場で起きたさまざまなケースを取り上げながら、四天王寺大学教育学部・准教授の田辺昌吾先生と一緒に、対応する際のポイントを考えていきます。

第3回は「園行事」にまつわる、保護者とのすれ違いがテーマ。どのように対話をしていけばいいのでしょうか。

【第2回はこちら】
子ども同士のケンカ、保護者には何をどう伝える?——よくわかる『保護者対応』の進め方②

1. 園行事は「誰のため」「何のため」に行うの?

運動会や生活発表会、作品展やお誕生日会など、園生活ではさまざまな行事があります。行事を通して生活に変化や潤いが与えられたり、行事が子どもの成長の節目となったりもします。

このとき、行事をより良いものにするためには、家庭や地域との連携・協働が欠かせません。だからこそ、保護者との実際のコミュニケーションに頭を悩ませることも多いでしょう。

具体的に、今回の相談内容を見てみます。

5歳児クラスの担任をしています。生活発表会の準備を進めるなかで、保護者に衣装づくりの協力をお願いしているのですが、なかなか引き受けてもらえません。毎年すごく盛り上がる会で、年長さんにとっては最後です。何とか思い出に残るものを、と思っているのですが……。

保育士として、「何とかいい発表会にしたい」という強い思いがあるからこその悩みですね。その前提を理解した上で、まずはこの行事を「誰のため」「何のため」に行うのか、きちんと確認してみましょう。

言うまでもなく、園で行う行事ですので、一番は「子どものため」「育ちのため」のはずです。しかし、何年も繰り返し行い、慣例のようになっていると、当初は明確だった目的が形骸化し、表面的な形だけが何となく繰り返されているということも起こり得ます。(特に今回の相談の「生活発表会」などは実施時期が限定されるため、演目が変わっただけで目的はあやふや、ということも多いものです)

なので、ここは改めて「今回の行事を通して、子どもたちにどのような経験をしてほしいのか」を具体的に見える化し、保育士間で共有する必要があります。

例えば「発表会を盛り上げることで、子どもの感性が刺激されたり、表現する喜びを感じたりしてほしい」場合と、「発表会を通して、子どもと保護者の関係をより深めてほしい」と考える場合では、ねらいが大きく異なります。

そこでは当然、保護者が衣装づくりをすることの意味合いも大きく変わってくるでしょう。

2. 保護者に協力を求める“背景”を説明する

実際に、上の2つの場合で、保護者とどのように行事を通した連携・協働ができるのかを考えてみます。

前者の目的の「子どもの感性が刺激されたり、表現する喜びを感じたりしてほしい」場合では、独自の衣装があると効果的であり、その作成のためのマンパワーとして保護者に協力を求めたいケースもあるでしょう。ですが一方で、必ずしも「保護者が」衣装づくりをしなくてもいいようにも思えます。子どもたちが行事に向けた取り組みの中で、自ら衣装をつくることを検討してもいいはずです。

そうした取り組みが難しいとき、けれども現実的に保育士が衣装づくりをする時間の余裕がないとき、目的を含めた背景を保護者にきちんと伝え、可能な範囲での協力をお願いすることは一つの方法でしょう。

保護者に協力を求める“背景”を説明する

さて、後者の「保護者との関係を深めてほしい」場合はどうでしょうか。「保護者に衣装づくりをお願いし、当日子どもがそれを身に付ける」ことで、子どもたちが保護者の愛情に気づいたり、保護者への感謝の気持ちを高めたりするねらいを持つことができます。

また、保護者の視点で考えると、自分がつくった衣装が会を彩ることになり、行事への興味・関心がより高まり、発表会の前後も含めた園生活への参画度合いが増すことも期待できるでしょう。

このケースでは、保護者の協力が必須となります。ある程度の時間を保護者に割いてもらう以上、そうしたねらいを保護者にきちんと伝え、理解してもらわなくてはなりません。

それでも仕事や家庭の事情から「協力が難しい」と相談があった場合は、園で柔軟なフォローができるようにしておくことも大切です。衣装の一部の作成だけをお願いしたり、作れなかったとしても色合いやちょっとした柄選びの話し合いをお願いしたり、少しでも子どもとの時間を共有できるように促してみましょう。

3. 行事も「日々の関係性」の延長にある

どのような場合であっても、ポイントとなるのは「なぜ保護者に衣装づくりをお願いしているのか」を保護者に説明し、理解を得ることです。その際、伝える相手をしっかりイメージし、今年の行事における「誰のため」「なんのため」をできるだけ具体的にすると、より協力を得やすくなります。例えば、

「発表会で衣装が必要なのでつくってください。どの保護者にも毎年お願いしています」

このような依頼の言葉と、

「今年はこのような行事のねらいがあり、子どもたちが役になりきるために衣装があると効果的だと考えています。保護者の方がつくられた衣装なら、一層子どもたちの意欲も高まるはずです」

こう説明を添えて依頼するのとでは、保護者の受ける印象は大きく異なるでしょう。(もちろん、すべての保護者の協力が得られるとは限りませんが)。大切なのは、保護者自身が「自分の協力が子どもの育ちにつながっている」と実感できることにあります。

行事も「日々の関係性」の延長にある

そのためには、保育士の日常的な伝達も非常に重要です。

「いつもきちんと持ち物の確認をしてくださっているので、◯◯ちゃんはとてもスムーズに園生活を送れています」

「週末にご家庭で一緒にお料理をされたこと、◯◯ちゃん、とてもうれしそうに話していましたよ。いろいろなところに興味が広がりますね」

些細なことかもしれませんが、こういった積み重ねが保護者自身の子育ての捉え方を肯定的なものにし、園の活動への理解を促すことにもつながっていきます。

普段から保護者と良好な関係が築けているか、そして「より良い保育のためには保護者の協力が欠かせない」ことを日々の中で伝えているかが、今回の相談のような行事での連携・協働に、実は大きく影響するのです。

4. 行事は保護者との関係を深める絶好の機会

一方で、行事は保護者との関係を深める「絶好の機会」であることも確かです。

普段はなかなか園との接点のない保護者も、行事を通してつながることはよくあります。だからこそ、行事の前後も含めて「子どもたちに経験してほしい」と考えていること、さらにその背後にある園の保育方針を伝えることができれば、日々の活動への理解を一層促すことができます。

また、そこに保護者の協力の必要性を丁寧に説明していくことも重要です。各園でドキュメンテーションなどを活用し、保育の様子や子どもの育ちを保護者に伝える取り組みが進められていますが、一層の充実が期待されます。

2020年度は新型コロナウィルスの影響で、日常の保育はもちろんのこと、行事についても過去に経験のない対応をさまざまに求められたことと思います。何となく前年踏襲で行っていた行事について、改めて「この行事のねらいは何か?」「子どもの育ちにとって必要な行事か?」を問い直し、行事の中身を見直したり、実施の取捨選択を行ったりしている園もあると聞きます。

そうした流れの中でぜひ、行事を通した保護者との連携・協働のあり方についても、各園で問い直していただければと思います。

田辺昌吾
四天王寺大学教育学部准教授。専門は「幼児教育学」「家族関係学」。羽曳野市子ども・子育て会議(こども夢プラン推進委員会)副委員長を務める。三人の男の子の子育て真っ最中。「家族・働き方・社会を変える父親への子育て支援」(共編著)ミネルヴァ書房、「子ども家庭福祉論」(共著)晃洋書房、「家庭支援論」(共著)光生館などを執筆。

(編集:佐々木将史)

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