手ぶら登園保育コラム

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子ども同士のケンカ、保護者には何をどう伝える?——よくわかる『保護者対応』の進め方②

子ども同士のケンカ、保護者には何をどう伝える?——よくわかる『保護者対応』の進め方②

保育士の仕事の中でも、重要なものの一つである「保護者対応」。

子どもの発達、日々の関わり方の相談から、いざというときの具体的な家庭支援まで、現場ではさまざまなものが求められます。「こんな相談をされたけど、どうしよう…」と悩まれた経験のある方も多いことでしょう。

この連載では、保育現場で起きたさまざまなケースを取り上げながら、四天王寺大学教育学部・准教授の田辺昌吾先生と一緒に、対応する際のポイントを考えていきます。

第2回は「子ども同士のケンカ」を発端にした、保護者とのトラブルにまつわるお悩みに答えていただきました。

【第1回はこちら】
「オムツを早く外して」の要望、どうしたらいい?——よくわかる『保護者対応』の進め方①

子どものケンカに、なぜ保護者は感情的になったのか

『ケンカ』と聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか?

「よくないこと」「できれば起きてほしくないこと」と思うかもしれませんが、保育現場でケンカは日常茶飯事。このケンカを通じて、子どもは貴重な経験を重ねています。例えば「自分の思いを主張する」「他者の存在や思いに気づく」「自分の思いと他者の思いを調整する」など、社会で生きていく上で大切なことを学んでいくのです。

とはいえ、保育の専門家としてそのことを理解していたとしても、保護者を巻き込んだ対応となった場合、頭を悩ませることは多いでしょう。具体的に、今回の相談内容を見てみます。

子ども同士のケンカで、軽く突き飛ばされたAちゃん(3歳児、入園2ヶ月)が転び、膝をすりむいてしまいました。怪我が起きてしまったことをAちゃんの保護者に謝罪し、ケンカに至った経緯もきちんと説明しようとしましたが、初めての状況に保護者が感情的になってしまい、保育士の言葉に聞く耳を持ってもらえません。

こんなときどうしたらいいのでしょうか?

ここではまず、なぜAちゃんの保護者が感情的になってしまったのか、その背景を考えてみたいと思います。

  • わが子を大切に思っている
  • 小さな怪我も悪と考えている
  • 「ケンカ=乱暴な行為」と考えている
  • 初めての園生活で親子とも不安が大きい
  • 家庭生活の中でもストレスがたまっている
  • 園や保育士に対して、実は不信感があった

大切に育てているわが子が「ケンカをした」「膝をすりむく怪我をした」と聞いたら、親としては誰でも戸惑いを感じますよね。例えば、それが親子にとって初めての園生活で、家庭での生活ではケンカや怪我をする機会がほとんどなかったとしたら、どうでしょうか?

子どものケンカに、なぜ保護者は感情的になったのか

あるいは、そのときにたまたま保護者がストレスフルな状態だったとしたら、他者の話に耳を傾けられず、必要以上に感情的になってしまうこともあるかもしれません。また、入園当初から園や保育士に対して不信感を抱いていたとしたら、ほんの些細な火種も大きなものになってしまいます。

そうしたいくつかの要因が重なり合って、今回のケースも感情的な態度につながっていると思われます。保育士にとっては、ケンカやすり傷程度の怪我は日常的によくあることかもしれませんが、個々の保護者にとってはそうではありません。

まずは相手の視点に立って、感情的な態度にはどのような背景があるのか、この保護者にとって何が一番のネックなのかを、受容・共感的なかかわりで紐解いていくことが必要です。

当日の対応を「保護者視点」で振り返る

このケースでは、実際には即時の対応が求められます。怪我をさせてしまったことの謝罪、ケンカに至った経緯やその後の子どもの様子、保育士の関わりを丁寧に伝達することは必須です。

とはいえ、そうしたとしても、相談のように問題が解決しないこともあります。保育士として意識すべきことをもう少し考えてみましょう。

例えば、今回対応したときの言葉の中に「すり傷ぐらい」というニュアンスが表れていなかったでしょうか?先に述べたように、ケンカやすり傷などの問題に対して保育士と保護者では捉え方が異なって当然ですが、それを保護者が感じ取ってしまうといい気はしません。場合によっては大きな不信感につながる恐れもあります。

または降園時に、ケンカや怪我のことを他の話のついでに伝えていませんか?あるいは、他の子どもや保護者の対応も同時に行いながら伝えてはいないでしょうか?そうした対応で問題のない保護者ももちろんいますが、保育士の対応が片手間になっていたら、受ける印象はどうしても悪くなります。

当日の対応を「保護者視点」で振り返る

勤務シフトなどの都合から現場にいなかった保育士が対応する場合も、保護者との行き違いが起きやすい状況の一つです。直接は見ていないことを説明するのはなかなか難しい上に、同僚の保育士間で問題に対する認識(ケンカや怪我の捉え方)に温度差があると、伝える内容にも影響が生じます。

加えて、保護者が「なぜ担当保育士がいないの?」「直接話を聞きたい」と思うことも想定されます。勤務シフトの都合上、仕方ないこともありますが、保護者から見ればそれは園の都合として目に映ることも理解する必要があるでしょう。

そうした不要なトラブルを避けるためには、普段から保育士間で密なコミュニケーションをして認識を合わせておくこと、正確な情報の申し送りや、連絡帳や電話連絡の活用などが鍵となります。担当保育士が直接伝えることはできなかったとしても、それを補う方法で保護者に向き合うことが求められるのです。

保護者対応は、機械的に順を追って進めていけばうまくいくというものではありません。一人ひとりに寄り添い、丁寧にかかわる。これは子どもの保育と同じだと言えます。相手にマイナスの影響を与える対応をしていないかなど、自分の対応を振り返り、今後に活かしていくことが重要なのです。

日頃の関係づくりが、視点の違いを埋める

こういったケースでは、問題が起こったときの対応に加えて、そもそも問題が起こるより前に「園や保育士が保護者とどのような関係性だったのか」も大きなポイントとなります。

まず大切なのは、保護者と担当保育士の間の信頼関係です。ケンカや怪我などのちょっとしたトラブルの際、信頼している保育士のもとで起こったことなのか、まだ信頼関係が十分築けていない保育士のもとで起こったことなのかで、保護者の受け取り方は大きく異なります。「信頼している○○先生のもとで起こったことだから、きっと大丈夫」と捉えやすくなるのです。

また、保護者と「何か問題が起こったときだけ情報伝達する関係になっていないか」も振り返っていただければと思います。『保育所保育指針』の第4章「子育て支援」には、次のように記載されています。

2 保育所を利用している保護者に対する子育て支援

日常の保育に関連した様々な機会を活用し子どもの日々の様子の伝達や収集、保育所保育の意図の説明などを通して、保護者との相互理解を図るよう努めること。

これは日頃のコミュニケーション、日常的に保育の様子や子どもの肯定的な姿(育ち)を伝え合っていることが、いかに大切かを表しています。

「問題が起こったとき」の情報伝達は、どうしても保育士も保護者も緊張感を伴うため、十分な関係性が築けていないと、些細な行き違いが大きな問題に発展する恐れがあるのです。日頃からリラックスした間柄でコミュニケーションをとっていることが、何かあったときも過度な緊張関係になることを防いでくれます。

日頃の関係づくりが、視点の違いを埋める

さらに、保育の意図について「保護者との相互理解を図っておく」という視点がとても重要となります。今回のケースでも、「ケンカや怪我についての園としての捉え方」が事前にどの程度保護者と共有されていたかは、問題への温度差を埋める大きなポイントだったはずです。

ケンカは子どもにとって発達上の大切な経験ですし、すり傷程度の小さな怪我を重ねることで大きな怪我を防ぐ力をつける、という考えもあります。各園でどのような方針で保育を行っているかを全職員で共有することはもちろんのこと、保護者にも入園説明のときや日常の保育の折々で伝達・共有を図ることが必要です。

ケンカなどのトラブルも「保護者とつながるチャンス」と捉え、子どもを通して保護者との関係構築を図っていってほしいと思います。

田辺昌吾
四天王寺大学教育学部准教授。専門は「幼児教育学」「家族関係学」。羽曳野市子ども・子育て会議(こども夢プラン推進委員会)副委員長を務める。三人の男の子の子育て真っ最中。「家族・働き方・社会を変える父親への子育て支援」(共編著)ミネルヴァ書房、「子ども家庭福祉論」(共著)晃洋書房、「家庭支援論」(共著)光生館などを執筆。

(編集:佐々木将史)

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