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保育士の処遇改善等加算に注目!特徴から問題点まで幅広く解説します

保育士の処遇改善等加算に注目!特徴から問題点まで幅広く解説します

保育士は給料が少ない職種として度々話題に挙げられる職業。その現状を回避するべく打ち出された「処遇改善等加算」をご存知でしょうか。
処遇改善等加算を知っておくことで、自らの給料やキャリアについて見直すきっかけになるかもしれません。

今回は、処遇改善等加算について解説すると共にその違いや問題点についてお話ししていきたいと思います。

保育士の処遇改善等加算とは?

処遇改善等加算とは、国が保育士確保を目的に作った取り組みのことを指します。昨今、共働き世帯の増加などに伴い待機児童数が増え、令和元年のデータでは43,822名にも登っています。

これには早急な受け皿確保が必要ですが、施設の数と同時に必要なのは働く保育士の数です。
ただ、業務量が多くハードワークの割に賃金が安い保育士は早期離職しやすい職業。平成29年のデータでは全職種の年収が491万円であるのに対し、保育士は342万円と全体の平均額から149万円も低いことが分かっています。

この保育士が離職しやすい現状を打開すべく、2つの処遇改善を通し保育士確保を目的として打ち立てられたのが処遇改善等加算です。次の章より詳しく解説をしていきます。

「処遇改善等加算Ⅰ」は保育士の賃金改善が目的!

保育士確保のため重要な点の1つとして、給料面の安定が挙げられます。給料が安定することによって、保育士の離職を防ぐことができるからです。
処遇改善等加算Ⅰは直接的な賃金改善において効果のある策だと言えるでしょう。

処遇改善等加算Ⅰを決める3つの要素

処遇改善等加算Ⅰは平成27年に導入をされました。目的は2つあり、1つ目は賃金の改善を図ること、2つ目は賃金改善の状況を把握することです。
処遇改善加算等Ⅰは、①基礎分②賃金改善要件分③キャリアパス要件分の3つの要素によって賃金が支払われることになっています。


引用:施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについて

  • ①基礎分
    平均経験年数によって賃金が上がる仕組みとなっています。給料の2%から最大12%までが加算されていきます。
  • ②賃金改善要件分
    以下のように支払われる仕組みとなっています。
    平均経験年数が11年未満の場合・・・給料の一律6%
    平均経験年数が11年以上の場合・・・給料の一律7%
    賃金改善計画と、その実施報告が必要になってきます。
  • ③キャリアパス分
    賃金改善要件分のうちの2%がキャリアパス分となっています。職員の役職や職務内容に応じた勤務条件と賃金システムの設定、職員の資質向上に向けた研修機会を確保し、職員への周知が条件となります。

この条件を満たしていない場合、賃金改善要件分から2%引かれることとなりますので、注意が必要です。また、次の章で解説する「処遇改善等加算Ⅱ」の条件を満たしていると、自動的にこのキャリアパス分もクリアしていることになります。

平均経験年数とは?

上記①と②で話している「平均経験年数」とは、各施設や事業所に在籍する職員1人あたりの勤続年数を全て合わせ、そこから対象の職員数で平均を出した時の数のことを指します。

対象となるのは1日6時間以上かつ20日以上勤務する非常勤職員を含む全ての職員です。

例を挙げてみましょう。常勤職員3名、非常勤職員2名の計5名の勤続年数が全て5年であるとします。勤続年数を合わせると25年です。これを対象の職員数で平均を出した数=25年÷5人=5年 つまりこの場合の平均経験年数は5年ということになります。

この例は分かりやすいよう極端な例です。注目すべき点は、勤続年数が平均的に低ければ平均年数も低く、反対に高ければ平均年数も高くなるということです。1度自分の園の平均勤続年数を計算してみると良いかもしれません。

また、この平均勤続年数は現在在籍する施設や事業所だけではなく、以下の施設等であれば今までの経験年数を合わせることが可能です。

  • 教育・保育施設、地域型保育事業所
  • 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校、専修学校
  • 社会福祉事業を行う施設、事業所
  • 児童相談所における児童を一時保護する施設
  • 認可外保育施設
  • 病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、助産所(保健師、看護師又は准看護師に限る)

引用:施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについてより抜粋

施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについてによると、「手当や一時金ではなく、基本給とすることが望ましい」とされています。また、「定期昇給とは別の上乗せとして賃金改善を行うこと」となっています。

つまり、この上乗せされる賃金は特別なものではなく、項目は異なりますが、日頃からの給料と同じような扱いで支払われるものであるということです。処遇改善等Ⅰはこのようにして決まった3つの要素から賃金が上乗せされるシステムを構築しています。

「処遇改善等加算Ⅱ」は保育士のキャリアアップが目的!

平成29年から始まったのが「処遇改善等加算Ⅱ」です。これは、キャリアアップの体制を整え、なおかつ賃金の改善もおこなうことで保育士の確保を目的とした策になっています。

保育士は今まで「園長」「主任保育士」の役職しかありませんでした。そのためキャリアアップがしづらく、昇給が緩やかで給料が思うように増えていきづらい現状がありました。この処遇改善等加算Ⅱでは、新しく3つの役職が追加されることとなりキャリアアップしやすい環境が整えられつつあります。

以下の3つの役職が追加となり、役職に就くことで補助金が国から保育所へもらえるシステムが作られました。補助金額と対象要件は以下の通りです。

役職補助金額対象要件
副主任保育士月額4万円①経験年数おおむね7年以上
②職務分野別リーダーを経験
③別に定める研修を修了していること
④副主任保育士等としての発令
専門リーダー同上同上
職務分野別リーダー月額5千円①おおむね3年以上の経験年数を有すること
②「乳児保育」「幼児保育」「障害児保育」「食育・アレルギー」「保険衛生・安全対策」「保護者支援・子育て支援」いずれかの分野を担当すること
③別に定める研修を修了していること④職務分野別リーダーの発令
参考:施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについて

経験年数は全て「おおむね」となっており、施設の状況に応じて決めることも可能としています。研修に関する要件は、令和3年までは受講要件を課さずにおこなっていきますが、令和4年をめどに研修受講の必須化を目指しています。

この処遇改善等加算Ⅱは、Ⅰと同じく賃金改善計画と実績報告をおこなうことも条件の1つとなっています。また「月給により賃金改善が行われていること」としていますので、こちらもⅠと同じ点です。

ただし、処遇改善等加算Ⅰとは賃金の配分方法が異なります。Ⅰは、平均経験年数に応じた8〜19%(キャリアパス要件を満たさない場合は2%減)が非常勤職員を含む全職員に充てられます。

これに対し、Ⅱは加算対象の人数分のお金が園に入り、園の裁量によって賃金が上乗せされる仕組みです。施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについてによると、以下の2点となっています。

  • 副主任保育士等への配分は、実際に月額4万円の賃金改善を行う職員を1人以上確保した上で、副主任等、職務分野別リーダー等に配分(月額5千円〜4万円未満)
  • 職務分野別リーダー等への配分は、加算対象人数以上確保する(月額5千円〜副主任保育士等への最低額)

引用:施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについて

表の対象要件欄③「別に定める研修を修了していること」は、それぞれに受けなければいけない研修を修了しているかどうかが条件の1つに挙げられます。この研修のことを「キャリアアップ研修」と言います。次の項で詳しく解説をします。

キャリアアップ研修とは?

処遇改善等加算Ⅱを受けるために必要な研修のことを指します。都道府県が実施主体となっており、研修分野は以下の8分野です。

  • ①乳児保育
  • ②幼児保育
  • ③障害児保育
  • ④食育・アレルギー
  • ⑤保険衛生・安全対策
  • ⑥保護者支援・子育て支援
  • ⑦保育実践
  • ⑧マネジメント

このうち、それぞれが修了する必要のある研修が異なります。

副主任保育士マネジメント+3つ以上の分野の研修(計60時間以上)を修了すること
専門リーダー4つ以上の分野の研修(計60時間以上)を修了すること
職務分野別リーダー自分の担当する分野(①〜⑥の中で)の研修(15時間以上)を修了すること

研修時間の要件もそれぞれに定められており、レポート提出などで知識や技能がしっかりと習得されているか確認があります。また、研修修了後には「修了証」が交付され、引越しで他県に行ったとしても、転職で他園で働くことになったとしても有効となるものです。自分のキャリアを示す大きな強みとなることでしょう。

処遇改善等加算の問題点

実際に保育士の処遇改善は叶っているのかというと、ⅠもⅡもそれぞれに問題を抱えている部分があるようです。それは、保育園や保育士の現状から起きている問題であることが分かりました。

賃金がきちんと反映されていない

処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱとも、賃金の上乗せによる保育士の確保を目的としています。つまり、処遇改善手当をもらっている実感が保育士にあることが大切ですが、ネオキャリアが2017年に発表した調査によると、処遇改善手当を実感していない人は85%にものぼります。

それもそのはず、国が支払った交付金のうち7億円以上の賃金が上乗せされていないことが、会計検査院の調査で明らかになっています。この調査は6000ヵ所の保育施設を対象におこなわれ、実に660ヵ所の園で賃金が正当に支払われていないことが分かりました。

保育施設は補助金や交付金で運営されている公的な存在ですが、一部の保育施設では、運営者や財政状況が明らかになっていません。そのような園で、保育士の賃金改善ではなく園の利益優先で使われている可能性があります。

日本の待機児童問題が深刻化する中、しっかりとした賃金改善をおこなっていくには政府や自治体がしっかりと介入し調整をしていく必要があります。

研修にいくことができない

処遇改善等加算Ⅱで必須要件とされているキャリアアップ研修。これは、各役職によって計15〜60時間の研修を受けることが必要ですが、この時間をなかなか取ることが出来ないという問題もあります。

人手不足から、保育士確保のために打ち出されている処遇改善等加算の取り組み。しかし、そもそもの人手不足があだとなり保育施設側が職員を研修に向かわせることに消極的であると言います。国も現場も保育士確保が最重要ではありますが、現場としては日々の保育も当たり前ですが欠かせず難しい問題です。

研修時間の調整など何か改善をしないことには、処遇改善を実感するには長期的になることが見込まれます。

国だけじゃない!地方自治体の処遇改善の取り組み

様々な問題がありますが、処遇改善をおこなっているのは国だけではなく、地方自治体も積極的に処遇改善の策を打ち出しています。家賃補助や、保育士の子どもが入園する際の配慮措置など実際におこなわれている取り組みを見ていきましょう。

江戸川区保育士確保プラン

東京都江戸川区では、4つの取り組みがおこなわれています。

  • 家賃補助
    保育士として働く人の家賃が82000円を上限として区から事業所へ補助が出ます。
  • 育児給付金の給付期間延長
    育児給付金の給付期間が最大6ヶ月延長することができます。これにより1歳児の4月から入園申し込みが可能となり、勤務の継続をするきっかけを作る目的です。
  • 潜在保育士の保育体験の受け入れ
    体験を通して、再就職の不安解消や仕事のペースを掴むきっかけ作りを助けます。
  • 子どもの入園に一定の配慮
    保育士として働く人の子どもが入園する時の申し込みに対し一定の配慮がされます。

流山市保育士就職支援制度

千葉県流山市でも、4つの取り組みがおこなわれています。

  • 保育宿舎借り上げ支援制度
    条件に合わせた月々の家賃補助がなされます。
  • 施設からの給与とは別に、正規職員に月額43000円の給与上乗せ額の補助
  • 奨励金の支給
    流山市に採用された新卒保育士、潜在保育士に対し、事業所を通じて奨励金が支給されます。
  • 保育士の子どもの保育所入園が優先的になされます

横浜市

神奈川県横浜市では、平成30年度から経験年数7年以上の全ての保育士に月額4万円の賃金改善がなされています。

これは、横浜の保育士の平均経験年数が8年に対し、国の処遇改善Ⅱの仕組みでは対象の保育士の1/3に支払われる制度となっており、7年以上の保育士全員が処遇改善されないということから打ち出された策です。

処遇改善等加算Ⅱと同じく研修に参加することが必要となっているため、国に準じたキャリアパスを基盤とした取り組みとなっていますが、全員に処遇改善が行き届くといった点で独自の処遇改善ということができます。

処遇改善の仕組みを知って働きやすい環境を作ろう

国がおこなう処遇改善等加算ⅠとⅡの取り組みは、賃金の上乗せによる保育士確保を目的としています。それぞれに特徴が異なるため、よく理解しておくことが必要です。また、これらの処遇改善は事業所を通しておこなわれるため、自分の園では内容がよく周知されているか確認することも大切でしょう。

合わせて、自分の自治体では同じような処遇改善がおこなわれていないか調べてみましょう。国の処遇改善にプラスして賃金が上乗せされたり、家賃補助があったりとその自治体ごとに異なった取り組みが行われています。

処遇改善の仕組みを知ることで、自身のキャリアアップや働きやすさにつなげることができるかもしれません。今回の話しを参考に、保育士を取り巻く処遇改善について興味を深め、処遇改善に努めていきましょう。

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