「まだ半年」の苦労。それでも、0・1・2歳の保育はおもしろい——企業主導型保育園『りんごぐみ』(2/2)
モンテッソーリ教育をベースに、一人ひとりの「できた!」に寄り添う企業主導型保育園『りんごぐみ』(大阪市淀川区)。
前回の記事では、園長の辻中夕先生にその取り組みをお聞きしました。
子どもの「一人でできた!」に寄り添う保育——企業主導型保育園『りんごぐみ』(1/2)
今回はその続き。前編でご紹介したような保育環境を実現させるために、園としてどのようなことを意識しているのか、運営における細かな工夫や、背景の考え方をお聞きしていきます。
「子どもたちができること」の見守り
保育理念である『こどもたちの「1人でできたっ!!」のおてつだい』。
これを実践するために、りんごぐみではさまざまな場面で、子ども一人ひとりの意思を尊重するようにしています。前編でご紹介した「無理強いさせない」という考え方も、その一つです。
一方で、現場の先生方には「子どもができることは、やらないで」とも伝えていると、辻中先生は話します。
辻中「服の着脱なんかがそうですね。子どもがなかなか脱げないとき、どうしてもパッと手伝いたくなってしまうんですけど、『自分で脱ぐ』体験を子どもたちにさせることが、保育者としては大事だと思うんです。
袖をちょっと引っ張ってあげるだけで、あとは自分で脱げることもある。なので、『できるだけ子どもにさせてあげて、脱げたときに一緒に喜んでほしい』と職員には伝えています」
急いでるときはこれ、保育士泣かせなんですけどね…と笑って添える辻中先生。同様に、0・1・2歳が同じ部屋で過ごす園だからこそ芽生える、子どもたちの「やりたい!」の気持ちにも、できるだけ応えるようにしているといいます。
辻中「縦割り保育になっているので、年齢を越えた関わりは自然と多くなる。そのなかで、下の子どもたちが上の年齢の子の遊びを真似してみたくなることは、たくさんあるんです。
発達上、2歳児はできても0歳児にはできないことは、どうしても出てきます。けれど、やりたそうにしてるのであれば、危険がないよう見守りながら、まずはできるだけ一緒にやろうと考えていて。
赤ちゃんだからできないよ、まだ1歳だからできないよ、ではなく、一番はその子の気持ちを大切にする。できるだけそこに寄り添える方法を、日々考えるようにしています」
コミュニケーションをとりながら、みんなで負担を減らす
日々、子どもたちの興味や行動を細かく見て対応していく、りんごぐみの保育。
その一方で、園では運営母体の三和建設と同様に、保育士一人ひとりの「働きがい」も大事にしています。実際に11名の職員のなかには、フルタイムの正職員から月に8回程度のパートの方までいて、多様な働き方が認められているとのこと。
もちろん、さまざまな方が働くことによる難しさもあるはず。園では、どのような配慮をしているのでしょうか。
辻中「働く時間に差が出るなかでも、なるべく職員同士が顔を合わせられるようにシフトを組んだり、連絡ノートで情報をしっかり共有したりするようにしています。
ただ、それが逆に保育士の負担にならないよう、できるだけ箇条書きでシンプルに書いてもらうこともお願いしています。それは他の日案や週案なども同じで、書類は重要な項目だけに絞って、保育に集中できるように考えていますね」
どうすれば保育以外の負担を減らしながら、子どものための情報をしっかり連携できるか。「開園してまだ半年」ということもあり、今は毎月のように、それを改善しているところだといいます。
辻中「一つの特徴としては、りんごぐみでは、フルタイムの先生とパートの先生の仕事内容を分けていません。短時間勤務の職員であっても書類仕事をしてもらっていますし、日々の改善案や自分がやりたいことを提案してもらっています。
許可がない限り、“持ち帰り仕事”は認めていないので、作りものも書きものも、みんなで保育時間内に終わらせるのが基本。そのためにどうしたらいいかというのを、全員で話し合って決めています」
「まだ半年」の先に見る、子どもが安心できる園づくり
新しい園をつくっていくのは、辻中先生も、他の職員の方も全員が初めて。この半年間、その苦労を日々実感しながら、それでも現場の先生方は「保育が楽しい」と口にしてくれるといいます。
辻中「半年間、子どもの追加入園も次々とあるなかで、落ち着かず大変なこともたくさんありました。こうかな?こうかな?って精一杯やってきて、ようやく最初の年度末を迎えらます。まずはとにかく、卒園児を職員みんなで気持ちよく送り出してあげたいと思ってますね」
当然、4月から先もまだまだ初めてのことばかり。春の外あそびも、夏のプール遊びもまだ経験がないので、それも今話し合っている最中だそうです。
りんごぐみがどんな園になるかは、1年経ってやっと見えてくるかな…と話す辻中先生。インタビューの最後に、それをどのような場所にしていきたいか、個人としてのお考えを聞きました。
辻中「子どもが安心して過ごせる園にしたいとは考えています。
りんごぐみですごいなと感じているのは、子どもの噛みつきが半年で一度も起きていないこと。0・1・2歳児クラスではどうしても起きてしまうことですが、それがないというのは、子どもたちのフラストレーションが溜まっていないからだとも思うんです。
例え赤ちゃんでも、自分の思いって誰もが持っています。そして、それがちゃんと大人に伝わる環境があることで、噛み付いたり引っかいたりしなくて済む。りんごぐみを、その状態が当たり前にある場所にしていきたいですね」
りんごぐみでは、今は運動会などの大きな行事はしていません。子どもたちの達成感や保護者の要望なども踏まえて、2歳児の行事をどうするかは迷っておられるそうですが、あくまで一人ひとりの「できた!」に向き合うことを、一番に考えていきたいといいます。
辻中「0・1・2歳の保育って、もちろん大変なんですけど、本当におもしろいんですよ。小さな成長を一つずつ見られるのって、すごく幸せだと思うんです。でも、忙しく育児をしていると、そんな瞬間を見逃してしまうことも多い。
だからこそ、『実はすごいんですよ』ってことに着目して、子どもに寄り添ったり、保護者の方に伝えたりする意味が出てくるのかなと考えています。大きな目標ではなくて、毎日の小さな目標に対して『できた!』と感じられることを、りんごぐみでは大切にしていきたいなって思いますね」
おむつの管理が楽になる手ぶら登園
おむつのサブスク手ぶら登園( https://tebura-touen.com/facility )とは、保護者も保育士も嬉しいおむつの定額サービスです。手ぶら登園は、2020年日本サブスクリプションビジネス大賞を受賞し、今では導入施設数が1,000施設(2021年6月時点)を突破しています。
保育園に直接おむつが届くため、保護者はおむつを持ってくる必要がなくなり、保育士は園児ごとにおむつ管理をする必要がなくなります。