手ぶら登園保育コラム

保育園の運営に役立つ情報を発信

子どもの「一人でできた!」に寄り添う保育——企業主導型保育園『りんごぐみ』(1/2)

「やったね!一人でできたっ!」

昨日までできなかったことが、今日できるようになる——子どもの“初めて”の瞬間に立ち会えることは、保育者として感じる大きな喜びの一つです。

ただ、日々さまざまなことが起こる園のなかで、一人ひとりのチャレンジを見守りきることは、簡単ではありません。

大阪市淀川区にある『りんごぐみ』は、モンテッソーリ教育をベースに、子どもたちの「日々の小さな成長」への寄り添いを大切にする企業主導型保育園です。その取り組みを、園長の辻中夕先生にお聞きしました。

モンテッソーリを軸にした、「できた!」のお手伝い

りんごぐみとは、150人近い従業員が働く『三和建設株式会社』が、企業主導型保育事業の仕組みを使って自ら運営する保育園。

定員は19名、2019年9月に開園してからまだ半年ほどの施設です。三和建設として、社員の方々の「働きがい」を高めていくなかで、産育休の復帰環境を考えて開かれました。

園舎があるのは本社ビルのすぐ裏手。子どもたちと社員さんとの日々の交流が生まれたり、避難訓練の際すぐに大勢の大人が駆けつけてくれたりすることが、「企業主導型ならではの安心感」を保護者にも与えているといいます。

そんな同園の保育理念は、『こどもたちの「1人でできたっ!!」のおてつだい』です。

これは『モンテッソーリ教育』の言葉からの引用で、子どもたちが本来持っている「自分で育っていく力」を信じ、そこに必要な手助けだけをしていきたいという思いが込められています。

辻中「私たちが預かる0・1・2歳児は、本当に日々の変化が大きい年齢です。昨日できなかったことが今日できる場合もあれば、昨日はできたのに今日できない場合もある。

どんどん体も成長するし、行動も変わっていきます。そのなかで、子どもたち一人ひとりが、『今日はこれができた!』という喜びを持てる毎日にしたいと考えました」

『りんごぐみ』園長の辻中先生『りんごぐみ』園長の辻中先生

日々の保育も、モンテッソーリの「自己教育力」の考えがベースの部分にあるといいます。

そもそもは、立ち上げに関わってくれた保育士がモンテッソーリ資格を持っていたことが発端。その理念と、辻中先生がこれまで大切にしてきた保育への思いが非常に近かったこと、三和建設のビジョン「つくるひとをつくる」とも一致することから、園が大事にする考え方として取り入れられました。

では、それが実際のりんごぐみの保育に、どう生かされているのでしょうか?

子どもたちが「自分で決められる」ことが大事

園で大事にしていることとして、辻中先生がまず挙げたのが「無理強いをしないこと」です。

例えばトイレ。最初の頃は一斉に行きますが、ある程度経ってからは「行きたいか、行きたくないか」を必ず確認して、本人の意思を尊重するそうです。

辻中「別に今トイレに行きたくなくても、『取りあえず行ってみよう』と誘う方法もあるし、実際におしっこが出ることもあると思います。でも、やっぱりそれは、手間を考える大人側の都合じゃないかな…と感じていて。

結果として行かなかった子が失敗しても、そこから学ぶこともあるはず。なので、子どもたちが一つひとつの行動を、できるだけ自分で決められるようにしてます」

子どもたちが「自分で決められる」ことが大事

辻中「給食も同じです。1・2歳児の子どもたちには、『これぐらい食べられそう?』『増やす?減らす?』と食べる量を自分で決めてもらっていますね。『食べる!』と言っても実際に食べられないことはありますが、そのときも『今日はここまでにしようか?』と、あくまで本人と相談して決めています」

どうすれば「食べることを好きになるか」を考えて、一人ひとりへの子どもに声かけをしていく。そこではもちろん、嫌いなものがあったときの寄り添いも大切だと、辻中先生は話します。

子どもたちが「自分で決められる」ことが大事

辻中「最初から『食べられないんだ、じゃあおしまいね』ではなく、一旦はメニューを出してみて、『明日は食べれたらいいね』『◯◯ちゃんは食べててすごいね』などと、声をかけています。食べられた子どもへの『やったね!お母さんに言おうね』という言葉から、自分も言ってみたいな…と思って食べる子もいる。私たちも、少しでも頑張れたら褒めるようにしてます。

ただ、それを無理強いしてしまうと教育にはならないんです。『できた!』の体験になる“スイッチ”は子どもによっても違うし、日によっても変わるので、それがどこにあるかを日々考えて保育をしていますね」

時代に合わせて、発達を促す環境づくりを

関わり方のタイミングを大事にするのは、遊びでも同様です。

りんごぐみでは、モンテッソーリ教育で使用される『教具』(発達における「敏感期」に合わせて開発されたもので、『感覚教具』『算数教具』などがある)も用意。使うときには、一人ひとりの発達段階はもちろん、その瞬間の興味や動きなどを見ることが保育者に求められます。

辻中「例えば、『この子は今、開けたり閉めたりに興味があるな』というときに、引き出しのおもちゃを目の前で見せてあげる。リングさしも、子どもの発達や行動を見ながらやってみせる。すごく難しいんですが、そのタイミングがうまく合うことで子どもたちも食いつくし、自分のなかにも入りやすくなります」

また、園内の環境設計として、時代とともに変わる子どもたちの生活背景も踏まえて、発達を促す仕掛けもあります。

その一つが、1・2歳の子どもたちが腰をかけられる絶妙な高さのベンチ。ベランダの側やトイレなど、園内のいくつかの場所に設置されています。

辻中「今はバリアフリー化が進んでいて、階段の上り下りをしない家やマンションも増えています。その分、ちょっとした高さから降りられなかったり、怖がったりする子どもが増えているのを感じていました。

こうしたハードルが園にあることで、子どもたちも階段に慣れてくれます。このベンチの高さだと、0歳の子どもでも上手に登ったり降りたりできるようになっていくんです」

時代に合わせて、発達を促す環境づくりを

辻中「他にも、例えば手先でいろんな感触を味わう経験なども、昔に比べて減っていると言われます。実際、手でスタンプ遊びをしようとしても、汚れるので嫌がる子どもたちが、少しずつ増えているんですね。

だからこそ、園で感触遊びがたくさんできることが大事になると思っていて。りんごぐみでは、小麦粉粘土もパン粉粘土もしますし、高野豆腐などいろんなものを触ったり、水につけてみたりしています。

すごく汚れますけど(笑)、慣れれば子どもたちから積極的に遊ぶようになりますよ」

<前編はここまで。後編では、こうした保育環境を実現させるために、園としてどのようなことを意識しているのか、運営における細かな工夫や、背景の考え方をお聞きしていきます。>

(取材・執筆/佐々木将史)

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