保育士の研究テーマを決めるときにおさえておきたい3つのポイント!
最近は卒業論文など、学校の課題としてだけではなく、現場で働く保育士さんも研究を行う機会が増えています。保育は子どもの成長に関わるとても大事なお仕事です。
だからこそ医療などと同じように研究を通して保育の質を高める必要があります。
しかし、いざ「研究を行おう!」となったとしても何をどう考えて研究のテーマを決めればいいかわからないですよね?
研究テーマはいわば、これから向かう目的地のようなものです。目的地がブレてしまえばどれだけ熱意があっても良い結果はでづらくなってしまいます。
そこで、今回は現場で働く保育士さんも卒論を書き始める保育学生さんも、研究テーマを決めるときには必ず抑えておきたい3つのポイントを実例付きで解説していきます。
保育士が研究するメリットとは?
「わたしたち保育士が研究をする意味あるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし保育士が研究をするメリットはとても多いんです。保育士研究のメリットは以下の3つがあげられます。
- 研究をきっかけに自分の気になる領域に詳しくなれる
- 行っている保育に根拠をもって取り組めるようになる
- 保育士全体の保育の質を高めることができる
1.研究をきっかけに自分の気になる領域に詳しくなれる
研究をすることで自分の興味・関心のある分野だったり、領域について深く調べるきっかけになります。
調べることで知識がつくため、その時々にあった適切な保育を行えるようになるのです。
2.行っている保育に根拠をもって取り組めるようになる
研究をきっかけにその分野・領域に詳しくなることで、根拠をもって保育に取り組めるようになります。
「この遊びよく子どもたちと一緒にやるけど、発育に本当にいいのかな…?」と疑問をもちながら働くのは不安ですよね。
しかし研究を行い、その分野にくわしくなることで「この遊びは子どもたちの脳の発達に良いって言われているから◯歳ぐらいの子どもたちには積極的にやってもらおう!」と自信をもって保育に望めるようになります。
3.保育士全体の保育の質を高めることができる
保育士は子どもの発達に関わるとても重要なお仕事です。
しかし、どのように保育を行ったら子どもにとってベストなのか。すべてが明らかになっているとは決していえません。
大学などの研究機関だけではなく、現場で働く保育士たちも積極的に研究に取り組むことで、保育士業界全体の質が高まり、子どもにとってより良い保育を行えるようになります。
研究テーマを決めるときにおさえたい3つのポイント
ここからは実際に保育士が研究を行う際に、必ずおさておきたい3つのポイントを解説します。
その3つのポイントは
- 「興味・関心」を具体的にしてテーマに活かす
- 「オリジナリティー」のあるテーマを選ぶ
- 実際の「現場に活かせる」研究テーマにする
です。 以下に解説していきます!
1.「興味・関心」を具体的にしてテーマに活かす
研究とは「研究とは、学問的、知的関心を出発点として問題決定。行い、リサーチによって自己の見解を形成していくこと。」とされています。
参照:迫、徳永|英語論文書き方入門
大事なのは「知的関心を出発点として」という部分です。あなた自身の興味や関心を大事にして、それを明らかにしようとする行動自体が研究なのです。
そのため、まず最初に行うべきなのは、自分の「興味・関心」をはっきりとさせることです。「興味・関心」を明確にして研究テーマを見つけるときは、まずは
- 漠然とした興味・関心のあるものをあげる。
- 複数の興味・関心をかけ合わせる
この流れで考えていくと良いでしょう。
まずは漠然とした興味・関心のあるものをあげる
研究テーマをいざ決めるとなっても自分の興味のあることや関心のあるものについて、自分自身がわかっていなければ決まるものも決まりません。
まずはざっくばらんに自分が保育について興味・関心のあるものをリストアップしていきましょう。
たとえば
- 子どもはなんでアンパンマンが好きなんだろう?
- ごっこ遊びってどんなものがあるんだろう?
- なんで子どもはごっこ遊びが好きなんだろう
- 子どもが喜ぶ遊び方って一体どんなものがあるんだろう?
- 子どもにとっていい遊び方ってなんなんだろう?
なんでもいいのでこのようにとにかくリストアップしていきます。
複数の興味・関心をかけ合わせる
ある程度リストアップしたら、今度は複数の興味・関心をかけ合わせて考えてみます。
そうすることで後で詳しく解説する研究のオリジナリティー(新規性)の強い研究テーマを定められます。先程あげたリストから
- 子どもはなんでアンパンマンが好きなんだろう。
- 子どもが喜ぶ遊び方って一体どんなものがあるんだろう?
という2つの興味・関心を掛け合わせるとします。
そうすると「子どもがアンパンマンが好きな理由から子供が喜ぶ楽しい遊びを作れないかな?」という興味・関心ができあがりました。
そしてその新たな興味関心から「アンパンマンが愛される理由とそれを応用した子どもに愛される遊びを作る」という研究テーマが決まります。
もちろん掛け合わせ方は人によりますが、大事なのはあなた自身がそのテーマに心を惹かれるかどうかです。
惹かれるテーマであれば夢中になって楽しくリサーチをすることができ、良い研究ができるはずです。
2.「オリジナリティー」のあるテーマを選ぶ
研究で大事な要素の一つとしてオリジナリティー(新規性)があります。どれだけすてきな研究テーマでもすでにだれかが取り組んでいる研究であればやる理由がなありません。
そのため、自分の興味・関心から導き出された研究テーマのオリジナリティーを確認していく作業が必要です。「私が思いつくようなことはもうだれががやってるんじゃないの?」そう思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、保育の研究はまだそこまで進んでいないので比較的オリジナリティーのあるテーマはみつかりやすいです。
また、完全なオリジナルではなく、似たようなテーマだけど”方法”が違ったり、検証する”場所”が違ったり、対象とする”年齢”が違ったりするだけでもそれはオリジナリティーのある研究になります。
自分の興味・関心のある研究テーマのオリジナリティーを調べる方法を以下に解説していきます。
研究のオリジナリティーは論文になっているかどうかで決まる
研究におけるオリジナリティーとはそもそも、論文として世の中に出ているかどうかになります。
だれかが研究した結果を論文として残している場合には、すでにそのテーマについてはだれかが研究している。ということになりますのでオリジナリティーは低いです。
ただし、学会などで発表しただけでは研究は完成されているとはいえません。
繰り返しになりますが、あくまで「論文になっているかどうか」これが新規性があるかどうかの基準になります。なので研究テーマのリサーチを行う際には論文を調べる必要があります。
日本語の論文検索サイトで論文を調べる方法
まず最初は難易度はそこまで高くないため日本語論文をリサーチしていくのが良いでしょう。
日本語の論文を調べる検索サイトには「J-STAGE」と「Google Scholar」があります。
いずれの検索サイトも保育研究の論文がたくさん掲載されていますので、うまく利用して自分の興味・関心のある論文を検索していきます。
例えば先ほどあげた「子どもがアンパンマンが好きな理由」の論文を調べたい場合にはJSTAGEで
このように検索してみます。
そうすると、
67件の論文がヒットしました。こちらの論文からアンパンマンが好きな理由を解説している論文を見つけ出します。
おすすめの保育学論文雑誌
興味・関心があまり具体的にならない人はひとまず保育学研究の専門論文雑誌を眺めてみるのも一つの手です。
論文雑誌はマンガでいうと「少年ジャンプ」のようなもので、たくさんの研究論文がまとめて掲載されています。
行われている実際の研究を眺めてみるとなにかインスピレーションが湧くかもしれません。日本でおすすめの保育学論文雑誌はこちらです。
JSTAGEのホームから検索するとどうしても医療論文などもヒットしてしまいますが、どちらも雑誌内検索をすれば保育学だけの論文がヒットするのでぜひ試してみてください。
踏み込んで調べたい人は英語論文も
さらに踏み込んで調べてみたい方には日本語論文だけではなく英語論文も調べてみるとかなりリサーチの幅は広がります。日本だけでなく海外に目を向けると論文の数は何倍にもなります。
また、海外で研究されているけど日本ではまだされていない研究もたくさんあります。そのように研究テーマを決めるのもアリです。
英語論文の検索サイトでもっとも世界中で使われているのは「PubMed」です。
もちろん中身は英語表記にはなっていますが、Google Chromeの翻訳機能を使えば意外と難なく読みすすめられます。
また、最近では「DeepL」というかなり高精度な翻訳サービスもあるので、ぜひ使ってみてください。
例)childcare(保育) play(遊び)の検索結果を翻訳
Pubmedにて「childcare play」と検索してみます。
すると
262件の結果が出てきました。これをGoogle Chromeで日本語翻訳して興味のある論文を探します。
一番上の論文を読んでみます。
この段階ではなかなか読むのが難しいですね。ここでDeepLを使ってみます。
かなり読みやすくなりましたね。このようにPubMedとGoogle翻訳、DeepLを使うと英語論文でも比較的すらすら読むことができます。
ぜひチャレンジしてみてください。
オリジナリティーの具体的な例「アンパンマンと遊び」
たとえばあなたが「子どもがアンパンマンを好きな理由を元に新しい遊びを作りたい」という研究テーマを定めたとします。
まずはアンパンマンが子どもに好かれる理由を探していきます。その結果、
アンパンマンが子どもに好かれる理由のひとつとして「正面を向いて両目がしっかり見えているか(正面性)」が関わる。ということがわかったとします。
【参照:伊藤 慶|やなせたかし絵本三部作の研究】
そこから、正面性を意識した遊びは子どもが喜ぶんじゃないか?という疑問に繋がります。
そして検索した結果、
検索結果は4件で、それぞれの論文を読んでも「正面性を意識した遊びの効果はだれもやっていなさそう。」ということがわかります。
このことから「正面性を意識した遊びの効果」という研究テーマは新規性のあるテーマであるといえます。
3.実際の「現場に活かせる」研究テーマにする
最後に考えるべきポイントは、その研究テーマが実際に「自分の保育の現場で活かせるか」です。
せっかくがんばって行う研究が、現場で活かせないものだととてももったいないですよね。
なので自分の決めた研究テーマで明らかになりそうな結果を知ったら「過去の自分は喜びそうか?」「保育士の仲間はどう思うか?」「現場で使ったら子どもにとってどんな影響があるか?」これらをイメージして考えてみます。
場合によっては実際に同僚の保育士に聞いてみてもいいかもしれませんね。
例)正面性を意識した遊びの効果がわかったらどうかを考える
先ほどから例であげている、正面性を意識した遊びの研究の結果、「ごっこ遊びをするときには必ず子供の正面に立って両目が見えるようにしたほうが子どもは喜ぶ」という事実が明らかになったとします。
それをもし過去の自分が知ったらという視点で想像してみましょう。
「きっと子どもと遊ぶときには正面性を意識して必ず子どもの目をみて遊ぶようにこころがけるだろうなぁ」とか「もっと早く知っていればよかった!」とか、前向きなイメージが湧くのであればきっと現場で活かせる研究テーマのはずです。
研究に取り組んで保育の質をあげよう!
保育士は子供の成長に関わるとても大事な仕事です。
だからこそ、医療などと同じように研究を通して保育の質・レベルをどうやって上げていくのか考えるのも非常に重要です。
今回解説した研究テーマを決める3つのポイントである
- 「興味・関心」を具体的にしてテーマに活かす
- 「オリジナリティー」のあるテーマを選ぶ
- 実際の「現場に活かせる」研究テーマにする
これらをおさえて、あなた自身と保育士業界、子どもたちのために研究に取り組んでみましょう!
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